内容監修
福永 里沙
RISA FUKUNAGA
福永 里沙
RISA FUKUNAGA
歯科医師
臨床研修修了後、日本歯科大学総合診療科にて一般診療に従事。より臨床の場で多くの患者さんの診療をするために、都内の口腔外科、矯正歯科、審美歯科で研鑽を積み、ジェネラリストとしての技能を習得。あらゆる年齢層、症例に対応できる診療の幅広さを強みとする。一歯単位の治療ではなく、一口腔単位の治療から全身の健康へつなげるような歯科医療の提供を理念に掲げ、デンタルクリニックTENを開業
口臭は、とても身近な悩みです
今や3人に1人が口臭トラブルを抱えていると言われており、そのうち多くの人が無自覚だと言われています。年齢や性別に関係なく口臭は発生し得ます。一方で、口臭トラブルがあると訴える人の4人に1人は実際には臭くないにもかかわらず、口臭がトラブルだと思い込んでいる、とも言われています。
口臭の病態
口臭のうち90%は口腔内の環境が原因と言われており、その他には鼻腔や肺といった部位のトラブルが原因になることもあります。歯と歯茎の間や舌の後ろ1/3に存在する食べかすをを栄養として細菌が増殖することで特有の悪臭を発します。特に嫌気性菌と呼ばれる菌が主体となり、硫化水素やメタンチオールなどといった揮発性硫黄化合物(VSCs: Volatile Sulphur compounds)を発生させることが原因となります。
実際の口臭の原因は大きく3つに分類することができます。
①健康な人の口臭
健康で口腔内環境に問題がない人であっても、口腔内が乾燥している朝には細菌が増殖し、口臭が出現します。この場合の口臭は、歯磨き・食事・飲水といった行為により改善します。
②悪臭を発する部位が実際にある場合
もっとも多いのは口腔に原因がある場合で、その次に原因として多いのは鼻腔のトラブルとなります。その他の部位に問題があることもありますが、比較的稀と言われています。
口腔の原因:口腔衛生の悪化、口腔乾燥、炎症
鼻腔の原因:鼻炎、後鼻漏、
気道(肺)の原因:気管支拡張症、気管支炎、肺膿瘍
消化管の原因:Zenker憩室、逆流性食道炎
③その他の要因
嗅覚の異常や、精神的な要因から実際には口臭がないのにもかかわらず、自身に口臭があると感じることもあります。
検査
人間が実際に口臭の強さを判断する官能試験と機器を用いる検査の2種類が存在します。
官能試験
実際に口臭を嗅ぎ、0~5の6段階で評価します。
0:無臭
1:ギリギリ臭いを判断できる程度
2:かすかに臭う
3:中程度の臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
機器を用いた試験
口臭測定器と呼ばれる機械が、ガスクロマトグラフィーといった方法で口臭の原因となる揮発性硫黄化合物(VSCs)の量を測定します。当院ではこの分析装置を設置しており、いつでも口臭測定が可能です。測定は10分ほどで完了し、結果に応じて歯科衛生士・歯科助手から説明を行います。
治療・対処法
原因がわかる場合
上記で述べたような原因が判明した際にはそれらに対するアプローチを行います。ほとんどの場合で口腔内に原因がありますので、クリーニングや歯磨き指導・食習慣を変えていく治療を行います。
口腔ではないところ、例えば長引く鼻炎や副鼻腔炎が原因の場合にはそれらの疾患の治療を受けていただきます。
原因がわからない場合
原因が特定できない場合でも以下のような習慣を心がけることで口臭が改善される可能性があります。
・糖分を含まないガムを噛む(唾液分泌の促進)
・よく水を飲む
・アルコールやコーヒーを飲む量を減らす
・毎日歯磨きやフロスを行うことで口腔内環境を整える
・専用の器具などを用いて舌の後ろの部分の掃除を行う
・就寝前に口をゆすいだり、うがいをする
歯石の除去や歯肉の状態を良好に保つ事で改善が期待できるため、定期的なクリーニング受診をおすすめしています。また、舌を磨くブラシのご紹介なども随時行っておりますのでお問い合わせください。
口腔環境の正常化や歯ブラシ指導等はもちろんですが、副鼻腔炎に由来する口臭などの通常の歯科医院では対応が難しいケースでも、併設の診療所と速やかに連携することが可能です。